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[コメント] 輝く夜明けに向かって(2006/仏=英=南アフリカ=米)

昨今の「対テロ戦争」などの情勢を考えるとなかなか含蓄のある、意味の深いテーマだと思うが、今ひとつ中途半端になった感も否めない。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







かつての、アパルトヘイト体制化での南アフリカを舞台にし、「テロリスト」、反体制闘争はどういうものかという一断面を描いたように見えて、実は「テロ」とは何かを考えさせるなかなか意味深な映画。

映画の最後でモデルとなった実在のパトリック氏が登場して、この映画が実話を元にしていることを知った。何がテロをもたらし、どうすればテロを克服できるのか、南アのアパルトヘイトの例をあげながら、おおいに考えさせられるものはあった。

しかし一本の映画としては、どうも駆け足でストーリーを追いかけていった面が強くて、主人公の人生を大きく変えるきっかけ、またその内面的な変化というか葛藤があまり感じられず、胸に迫ってくる、こみ上げてくるものがない。

どうも製作者の訴えたいことと、商業的な思惑がせめぎあうというか、中途半端にぶつかり合ってどっちつかずになってしまったように思える。

映画のクライマックスはやはり製油所の爆破をめぐるシーンだろうし、潜入から最初の爆破、そして最後の破壊工作の成否をめぐるシーンはそれなりにハラハラさせられたのだが、改めて考えると、あの大きな鉄塔で対して大きくない爆弾をよくまあ、たった一人の捜査官が爆発前に見つけられたなあと、ご都合的な展開を感ぜずにはいられない。

映画的なスリル、サスペンスを重視したのだろうが、「テロ」とは何かというテーマからすれば、この部分は大胆に短くしてでも他に描くべきものがあったのではないだろうか。

サスペンスドラマとしての映画か、あるいは実在した主人公の人生をリアルにドキュメンタリー的に描くのか、そのどちらにも踏ん切りがつかないまま中途半端にまとめられたような印象が強くて、ちょっと惜しいというか、もったいない仕上がりになったなと思われた。

(評価:★3)

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