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[コメント] 山桜(2008/日)

あの短い小説が90分以上の映画になってどうなるのかとやや心配したが、控えめで丁寧な美術、演出と役者の演技でひとかどの時代劇として成功している。特に短いながらも東山紀之の殺陣は秀逸。
シーチキン

非常に美しいシーンが多い。いずれも心洗われるような、日本の四季折々の美しい風景なんだが、それが映画としてどうかとなると、「美しいなあ」とは思っても、見ていてわくわくするというか心を躍らすような映画のシーンとしてはちょっと物足りない感じがする。

だが役者たちの衣装や仕草などは、実に丁寧に、小道具の一つ一つにまで心をくばり、本作に一流の時代劇としての風格を漂わせている。

田中麗奈のたたずまいも上出来で、いかにも武家の娘らしい仕草や心の動きなどをよく表現できていたと思うが、一方でそれを仕上げたスタッフたちの努力も大きいように感じられた。

藤沢周平の原作は文庫本でも20頁という短編小説だが、それでも小説は人物の心の動きを文字で表現できる。本作ではナレーションの類を一切使わず、役者の演技だけでそれを表そうとしたために、壇ふみの役どころなどは少し原作と異なる印象こそあるが、大筋は原作に忠実であり、短編小説の映画化としても良質だと思う。

とりわけ東山紀之は出色。これは原作もそうだが、ほとんど台詞のない役どころながらもしっかりとした存在感を示し、その上、背筋をぴんとはった姿勢の良さと落ち着いた物腰で「これは人物だな」と思わせるだけの武士を演じ切った。その殺陣も刀の扱いが実に様になっており、今後、もっともっと時代劇で活躍してほしい役者になった。

(評価:★4)

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