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[コメント] ゴーストライター(2011/仏=独=英)

「おいおい、うちのは大丈夫なんだろうな」と思わず言ってしまいそうになるほど、ありそうな話に見える。虚実ない交ぜの物語が非常に巧みで、「もしかしたら…」という余韻がたっぷりと味わえる、最上級のサスペンス映画だと思う。
シーチキン

**ネタバレ注意**
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ネット検索とかカーナビなど現代的な小道具の使い方もうまいが、そういうものを使いながらも実に古典的というか、スパイ・サスペンスの王道をきっちり踏襲した映画ではないだろうか。カーナビなんかは一昔前なら、固定電話のリダイヤル機能で済ませていたものを、わざわざ車でそこまで行くというのが大げさだが上手にやっている。

またピアーズ・ブロスナンユアン・マクレガーだけでなく女優陣も含めてキャスティングがぴたりとはまっているのもよい。それぞれの持つ、自信過剰なところとか屈折したところとか、いろいろな雰囲気が良く似合っている。

何より本作の魅力は、物語の中においても、何が真実なのか、どこまでが本当なのか、あいまいなままで貫き通したところだろう。

この点では、後半の飛行機の中でのピアーズ・ブロスナンとユアン・マクレガーのやりとりは秀逸な出来ばえだと思う。すべてを見終わって後から思い返してみても、あの飛行機の中で、ブロスナンの態度は真実を隠そうとする芝居だったのか、それともユアン・マクレガーのとんでもない見当はずれ(と思える)のバカバカしさにあきれただけなのか。

またブロスナンが狙撃されたのは、息子の無念を晴らしたい軍人である父親の狂信的な犯行なのか、真相を葬ろうとする者たちの陰謀なのか。何よりも最後の最後、明らかにされた暗号が示した秘密は真実なのか、そしてあの車はただの偶然なのか。

これらすべてがあいまいなまま、終わりを告げるのが、何ともむずむずさせる。「ひょっとしてこれって、本当の話じゃないのか。ブロスナン演じる英国元首相って、当然、史上最年少で首相になったブレアがモデルだけど、ぴったりしすぎてるような・・・」という漠然とした妄想が膨らんでいく。

その妄想と不安を娯楽として楽しませる、懐かしい香りが漂う最上級のサスペンス映画だった。

(評価:★5)

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