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[コメント] こんにちは、母さん(2023/日)

こういう結末なのに、なぜか観終わって「ああ、良かったな」と、幸せな気持ちになれる。これこそ、世相を巧みに取り入れ、落ち着いた抜群の構図と、人情の機微を丁寧に描くことで魅せる山田洋次監督のマジックだろうなあ。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







息子は有名企業を退職せざる得なくなり、妻とも離婚し、ローンのあるマンションを引き払って、年金暮らしの母親の下へ転がり込む。母親は母親で、夫に先立たれはしたが、近所の友人、知人もあってにぎやかではあるが、ちょっぴり心をときめかせていた好きな男性には去られ、いつかは自分も寝たきりになるのでは、という不安を抱えて暮らしていく。

というのが、この映画の結末だよね。これだけ読むと、なんだか現代社会の歪みだか矛盾だかの前に踏みにじられて悲惨な目に遭わされるような物語なんだが、なぜかラストに「良かったなあ、みんな」と思ってしまう。

特に息子については、50前後での再就職は難しいよ、空き缶集めていた田中泯は明日の姿かもしれないよ、というのが現実なんだろうが、それでもリストラばかり進めるよりはましだと思えてしまうのが、山田洋次監督のすごいところなんだろうなあ。

あとね、今回吉永小百合を足袋屋のおかみさんにしたのは、山田さん、思い切りましたね。もうなんのてらいも不自然さもなく堂々と足首を愛でていましたね。そりゃあ足袋屋なんだから、足首や足をじっくりざっくりなめる様に触りますわな。御大にここまで奔放にされると、もう何の言葉もございません。

ところで、息子の妻は結局、足首しか出なかったように思うのだが、あれは女優の出演陣の誰かが演じたのだろうか。それとも、もしかして山田監督には、「足首ならこの人」というような、俗に言う「手タレ」のような、専属の「足首タレ」みたいな女優がいるのだろうか。今度はクレジットでも出して欲しいです。

あとね、加藤ローサは久しぶりに見た感じがしました。ずい分ときれいな大人の女性になっていて、うれしかったです。大泉洋の秘書というか直属の部下という役どころで、出番は少なかったけど、きれいになっていました。

この二人は、06年の『シムソンズ』でも共演していて、その時は加藤ローサが主役で、大泉洋が彼女を引き立てる脇役でした。本作ではその立場を入れ替えての共演となったけど、相性はいいように思いました。山田さんの常連組に入れてもらえるとうれしいです。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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