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[コメント] デイブレイカー(2009/豪=米)

ヴァンパイアであることの退廃的な美と快楽は、彼らがマジョリティであるという設定によって、光を避けた闇の中でのみ活性化する都会の退廃美としての広がりを見せる。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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弟が、ワインの瓶でも贈るようにして人血を贈ることや、人間たちのアジトがワインの製造所であること、人血を極力控えているらしいエドワード(イーサン・ホーク)が、口寂しいことの代償行為のように煙草を吸いまくっていること、駅のコーヒー店で、一見紳士風のおじさんが「キミ、コーヒーの血が少なすぎやしないかね」とクレームをつけたのがきっかけで起こる、血に餓えた群集の浅ましい暴動、等々、人血を啜りたがるという異常な性質を現実社会のイメージに限りなく接近させる工夫が不気味かつ愉快。

バットモービルみたいな「日中走行モード」は何だかワクワクするし、車に空いた銃弾の穴から射し込む日光に脅えるエドワードの姿や、木漏れ日を慎重に避けながら樹の下でライオネル(ウィレム・デフォー)と会うシーンなど、観客に日光の「熱さ」と「眩しさ」を痛感させようとする丁寧な演出によって、作品の世界観に引き込もうとする姿勢が好ましい。

「ヴァンパイアから人間に戻った者の血を吸った者もまた人間に戻る」という設定を活かした、終盤の阿鼻叫喚は、犠牲者を食い物にし血を啜った当人が、それによって人間化した途端に他のヴァンパイアの餌食になっていくという因果応報性や、ヴァンパイアであることの残酷さと浅ましさを最後のダメ押しのように実感させる光景によって、「あー、やっぱ不老不死といってもやっぱ、ヴァンパイアはよくないよなー」と何となく観客を(飽く迄も単純な感情レベルでだが)納得させる。そしてまた、「治療薬」としての血による連鎖的な人間化そのものをも見せてくれる。実際はそう簡単な話じゃないだろうと理屈では考えさせられてしまう詰めの甘さは否定できないが、真剣なバカ映画としてのこの作品内では一応完結した答えを出しているのかもしれない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Orpheus 3819695[*]

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