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[コメント] 死亡遊戯(1978/香港)

ツギハギ編集で強引に死者を甦らそうとする、禁忌の人体練成の如きおぞましささえ漂う作品だが、メタ映画的仕掛けで自らを正当化させる工夫が面白い。リー自身が遺した格闘シーンへと観客を導く為の体裁を整えて曲がりなりにも完成させたこと自体は立派。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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だが序盤の、鏡にリーの顔写真を貼って代役の顔の代わりにしたカットは、リーの生首が宙に浮いているようで、背筋が凍った。このチープな画作りはちょっと冒涜的でさえある。編集に於いても、リーの写ったカットだけ背景が違っていたりして(同じ背景を作る予算ないし時間が無かったのだろう)、至る所に綻びが。

監督のロバート・クローズは『SF最後の巨人』でもユル・ブリナーに上半身裸で格闘させ、『燃えよドラゴン』よもう一度という思いが強かったのだろう。リーを主役にせめてもう一本くらいは撮りたかったのかもしれない。

映画スターとしてのブルース・リー本人と重なるビリー・ローなる主人公。その彼が、映画の撮影中に「顔」に傷を負った上、死を装って国葬に陶製の死体を用いるという、映画のトリックのような策略。更には、サングラス、付け髭、カツラ等による変装。顔をヘルメットで覆った敵のトラックスーツとヘルメットを奪って変装するシーンもあるが、すぐ相手方にバレるので、殆ど意味が無い。こうなるともう、代役による肉体の置き換えと偽装という、本作そのものへの自己言及としか思えない。

最後に闘う相手がまた、超人的な長さの四肢を武器とする、これまたサングラスで表情を隠した黒人という、人間的な枠を超えた身体性を有する存在。その肉体の特権性を誇示することで映画スターの座を獲得したリーの遺作が、様々な形で身体の確からしさを揺るがすようなこうした作品として仕上がるとは、何という皮肉。

レストランの店内の階段が、強敵の待ち構える塔へと続いているというのも無茶な話だが、塔を登るにつれて強敵が……という少年ジャンプ的舞台設定のアイデアは見事。ジャンプといえば、『北斗の拳』でケンシロウがバカでかい敵と闘うのも、この映画のハキムとの格闘シーンに影響されてのものなのではないか。

(評価:★3)

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