この映画の不思議なところは、過剰さにある。監督が、強烈な自己への陶酔を隠そうとはしない。自己陶酔は、アニメーションでいうと、「耳をすまぜば」「海がきこえる」「彼氏彼女の事情」に近い感じがする。ただ、これらの作品が、日常の中で、ごく自然なかたちの感情の発露をみせるのに対して、本作は常に２００パーセントの力で全力疾走しようとする。照れや気恥ずかしさの類はみられない。その辺に、独自性や価値を見出せれば、面白いと感じるかもしれない。

しかも、これほど過剰な情感を、語ることで繋げていく点がが独特である。 子供の感じた世界を、子供の独白みたいにして文学的に語る。基本的に子供はもっと、自分の感情を説明できないものだ。そのことを大抵の作り手は分かっているから、言葉にしない。代わりに、表情で作る。アニメだったら、そのような顔を書き込む。映像が文学と違うところはこの辺にあると思うのだが、本作は、決して感情変化を映像に依存しない。そして映像は奇怪で、青空に銀河があり、ありえない高さに桜の花びらが舞う。登場人物たちは風景の一部と化し、ただの装置である。

つまり、作家が自分の精神性を見せびらかすために、いろいろがあるため、語れば十分で、表情を書き込む必要がないわけだ。通常なら、こんなこと自分ひとりでやってくれ、と突っぱねる所なのだが、この作家は、どうやら天然でこんなことをしている感じがするので、容易く切り捨てるのは惜しい。というか、逸材なのかもしれない。