コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] エンジェル(2007/英=仏=ベルギー)

嘘が痛可愛い♪♪観念の世界に生きる人間って、わたしは好き。
夢ギドラ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







作家とかの創造的活動には、2種類あるはずで、実際に目にしたものを美しく適切な言葉に変換できる人と、あと頭のなかだけで作ってしまう観念の人が居て、本作の主人公は、後者。わたしは、断然、観念の人に魅力を感じる。

主人公エンジェルは、小説中にシャンパンについての記述をするが、実際にシャンパンを飲んだことがないから、シャンパンが栓抜きを使わないという事実のことを知らない。言われたくないことをを指摘されて、多くの人が恥ずかしいと感じて慌てるかもしれない。でも、エンジェルは、だから?という感じで、相手の前では強がりを言う。それで、一人になってから、悔しくて悔しくて泣くのである。こんな人間は確かに居るけれど、記述するのは難しい。愛すべきバカとして記述するのはもっと難しい。Fオゾン監督は、やっぱ巧いなあと思った。

エンジェルの人生は、常に芝居がかっていて異質に見えるが、稀な人生とは思わない。母親が死のうと、夫が死のうと、自分を都合よく美しく見せるための手段として使う。家族の死を悲しんでるのか、悲しんでいる自分って素敵♪と思っているのか、いまいち分からないのだが、自分も含めて人間は少なからずこんなところがある。エンジェルは人の死だけでなく、自分が死ぬ間際もなんだか芝居がかっている。〜とか言ってる自分って素敵じゃん。と自己陶酔している描写があるから、私はこの痛さが、すごく可愛いと思った。

会話劇としても、嘘をつきつつ、他人の攻撃をひらりひらりとかわしている様は、面白かった。というか、勉強になった。

フランソワ・オゾン監督が、どういう理由で、この映画を撮ったのかは、さっぱり分からないのですが、この監督は、女性を、触れて欲しくないレベルで描く感じがして、憎しみすら、滲み出ている気がしてしまうのだけれど、本作の主人公エンジェルは、とてもピュアな女性だった。なにか心境の変化があったのかもしれない。

といっても、ヒモ亭主の不倫女は、オゾン監督の作品至上まれに見るひどい女性だった。あのしたたかさは、なんなのだ。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)G31[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。