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[コメント] 天井桟敷の人々(1945/仏)

まさしく回転木馬。マルセル・カルネは最後まで木馬を止めなかった。
田原木

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ジャン・ルイ・バローの演技、特に表情に胸を打たれた。ピエロの姿とあの悲哀を湛えた無垢な表情が相乗してこの物語に圧倒的な説得力を与えている。彼は私にとって一生忘れられない登場人物の一人になるだろう。

また、ラストで不意に二人の密会を発見したナタリーがバチストに向かって呟くように言う台詞には涙が出そうになった。個人的な理由で申し訳ないが、ああいう呟くような言い方には酷く弱い。

台詞も美しい。登場人物は皆くどいくらいに上手いことを言う。うざったく感じる人もいるかもしれないが、私はすきだ。

見終わった後の物足りなさはあのラストのせいじゃないだろうか。ギャランスはまた旅立ち、バチストはまた置いていかれ、哀れなナタリーはまた孤独を感じる。あのラストシーンはマルセル・カルネが故障の生じた木馬を停止させず、なおこの構図を保とうとしたがゆえ。

ただ、あそこで木馬を止めなかったからこそ、豊かなそして美しい音を立てながら見るものを魅了する回転木馬は半世紀を過ぎた今でも回り続けているのだ。

(評価:★5)

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