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[コメント] 鏡の中の女(1976/スウェーデン)

人間の本質に迫り、恐ろしい程に精神的に肉迫され、現実の残酷さを淡々と見せられ、現実の前では生身の叫び声でさえもかき消される。ベルイマンは現実の残酷さを描くと共に、「救い」も忘れてはいない。
牛乳瓶

**ネタバレ注意**
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本作は幼児期の記憶や現在の自分自身に苦悩する精神科医に焦点を当てた人間ドラマであり、彼女の苦悩が我々観客の緊張感を煽り、彼女の見る幻影が我々の不安を掻き立てる。主人公のエニーの気持ちが左右されると同時に観客の心も見事に揺さぶられる。本作では人間の本質にまで迫り、恐ろしい程に精神的に肉迫され、現実の残酷さを淡々と見せられ、現実の前では私達人間の生身の叫び声でさえもかき消される。しかし、ベルイマンはさすが一筋縄ではいかず、現実の残酷さを描くと共に、エニーの死んだ両親を夢の中に登場させ、彼女を救う事も忘れていない。

本作の主人公エニーは日常生活の中でふと自己を見つめ直す。真実の自分を見つめる事により、自分自身を否定し、自分自身を抹消し、新しい自分として生まれ変わりたいと願う事になる。この感情を壮絶に表現しているシーンとして、エニーが自分自身で自分を棺桶の中に入れ、棺桶に火をつける。これは、自分自身への嫌悪の感情以外何物でもない。そして、エニーは現実に自殺を試みる… エニーに共感し、また、恐ろしさを覚えると共に感動した。人間の本質の核にまで深く迫っており、人間の存在価値まで問うている。ベルイマンの観念に深く触れる事が出来る名作である。

リブ・ウルマンの演技は映画史に残る名演技で、人間の表と裏、常に私たちが抱えている不安を見事に表現している。それでいて抑制が効いた演技であり、身振り手振りで精神異常者を演じるようなことは決してない。

(評価:★5)

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