[コメント] 東京暮色(1957/日)
小津のフィルモグラフィでは最も「愛すべき」という語による形容が相応しくない作品にも思えるが、「小津による真冬」が描かれているというだけで、しかし私はこの映画を愛さざるをえない。
確かに暗い映画だ。暗すぎる。それは物語が暗いというよりも、まず端的に照明が暗いということなのだが、それにしてもこの暗さはやりすぎ。なぜここまで暗い必要があるのか、私にはまったく分からない(そこがいいんですけどね)。しかし本作が小津のモノクローム最終作であることを考え合わせれば、案外「ここで『暗』を極めたかった」といった素朴な理由によるものなのかもしれない。
有馬稲子の役どころは当時の彼女にはいささか荷が重かったようだが、それでも作品の冷たさを損なってはいないし、田浦正巳ほかグロテスクなキャラクタ群が織り成すドラマとして見てもすこぶる面白い。
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