[コメント] オズの魔法使(1939/米)
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この映画に描かれる絶望はまさに私を絶望に陥れる。可愛がっている小犬が理不尽な地主に殺されそうになること。まったく未知の土地にひとり放り出され、家まで帰れなくなること。顔面緑色の魔女に「アンタの命、この砂時計が落ちきるまでだかんね」と宣告されること(この「余命」の視覚化の恐ろしさ!)。「子供にとっては」などという但し書きをつける必要のない、圧倒的な絶望ではないだろうか(あるいはそれはまだ私に多分に幼児性が残っているためかもしれませんが)。
その一方で、やはりこれは幸せで幸せで幸せな映画だ。カラー映画はこうでなくてはいけないと思わせる色使い。ジュディ・ガーランドがまだ出会ったばかりだと云ってもよい案山子男レイ・ボルジャーとブリキ男ジャック・ヘイリーに云う“You're the best friends anybody ever had”という台詞、しかし“best friends”という言葉がこれほど胸に迫ったことは他にない。オズの魔法使いが実はただのペテン男であったこと、魔女マーガレット・ハミルトンが水で溶けてしまうこと、結局は最初に出会った良い魔女ビリー・バークのおかげでカンザスに帰還すること、これらのいいかげんさもまったく映画的で幸せないいかげんさだ。
画面設計(特にロングショット)も見事だし、美術もとてもいい。ハミルトンの城の造型(「階段」がいいんですよ!)、トトをトコトコ走らせるという跳ね橋の使い方。地主ハミルトンの自転車の乗り方をはじめ、ひとつひとつのアクションを印象に残す演出も優れている。楽曲がすばらしいことは云うまでもない。もうほんと大好きな映画!
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