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[コメント] MAD探偵 7人の容疑者(2007/香港)

金田一耕助にしてもシャーロック・ホームズにしても名探偵というのは変人の素質があるものだ。その傾向を推進すればこのラウ・チンワンが生まれるのも必然かもしれない。作中で最も信用できないキャラクタこそが探偵というストーリテリングの冒険。語り手と観客が拠って立つ足場は始めから崩壊している。
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**ネタバレ注意**
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しかし、このように凝りまくった設定はジョニー・トーの得意分野ではないのかもしれない。それでもまがりなりにも九〇分にまとめ上げてしまうあたりはさすがとしか云いようがないし、七重人格を七人に演じ分けさせたうえでリーダー格を女性にするという着想であるとか、そこにおいても結局はラム・シュを重用してしまうところなんかも絶対に嫌いになれないが、そこかしこでトーのヴィジュアリストらしい演出が上滑りしているという印象は否めない。ラストの鏡の銃撃戦にしても、『上海から来た女』由来であるかどうかはともかく、トーにはもっともっと凄い画面を期待してしまう。

ただし、「人間の内面のヴィジュアル化」という山本英夫の漫画『ホムンクルス』と共通の着想を映画の骨子にしながら、決して物語をその絵解きには走らせないあたり、やっぱりジョニー・トーは根っからの映画屋だ。

(評価:★4)

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