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[コメント] NINIFUNI(2011/日)

あるワンカットを核に据え、全篇が演繹的に組織されている。筋肉質で強固、しかし息苦しい構成だ。逃走と彷徨のロード・ムーヴィとして撮りたい状況を用意しながら、宮崎将にロード・ムーヴィと呼びうる移動距離は与えられない。ジャンルに対するある種の裏切りがこの映画に固有の感情をもたらしている。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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核に据えられる「あるワンカット」とは、云うまでもなく、自動車内で息絶えた宮崎と、その車窓越しの遠景で少女アイドルが溌剌パフォーマンスを繰り広げるロングテイクだ。「無限大の距離で隔てられた」とでも形容したくなる二つの世界を同一フレームに収めたワンカット。これを正しく成立させるべく全篇は構成される。中篇というヴォリウムゆえに実現可能だった側面はあるにせよ、これは掛け値なしに頭のよい映画だ。しかし私の好みに照らして云えば、これでは少しく理屈が先走ってしまっている。

したがって、私はむしろラストカットのほうを高く買いたい。劇中にも既に再三登場したような匿名的な地方都市郊外の国道風景。少々注意深く画面に視線を注いでいれば、その車道沿いに「GAME&ファーストフード」という看板を掲げた店舗が存在していることに気づくだろう。すなわち、ここはファーストカットと正確に同一の地点なのだ。匿名的、つまり「どこにでもあるような」風景かもしれないが、決して「どこでもよい」のではない。ファーストカットから出発した物語は、変わり果てた姿でファーストカットと同一地点としてのラストカットに「連れ戻され」て幕を閉じる。そのどこか超現実的でもある無常観が、映画の肌触りを積極的に無視したエンディングのアイドルソングとも相まってベリークールだ。

(評価:★3)

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