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[コメント] エヴァの告白(2013/米)

既にして古典。自らの出自を探求したジェームズ・グレイの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は『』の三角関係を見据えたメロドラマだが、男女の泥沼には成瀬巳喜男も見え隠れする。屋内外を問わず繊細という名の贅を尽くした光の差配はダリウス・コンジの経歴でも指折りの美しさを誇る。
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時代設定は一九二一年だという。とすれば、以下の記述もあながち妥当性を欠いてはいない。すなわち、ホアキン・フェニックスジェレミー・レナーが劇場で繰り広げる大乱闘(追いかけっこ)シーン、フェニックスが警官から逃走するもあえなく袋叩きに遭うさまを異様な明滅と影の画面で描いた坑道シーン、全篇の大部とは明らかに異なる情緒をはらんだこれらの「活劇」シーンには、それぞれ「スラップスティック・コメディ」と「ドイツ表現主義」という同時代の映画のテクスチュアが織り込まれている。数多くの映画を見て、記憶し、参照できる演出家が必ずしも優秀であるとは限らないが、ジェームズ・グレイはほとんど理想的な仕方で人類に与えられた映画のライブラリを駆使している。

(評価:★4)

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