[コメント] 誰よりも狙われた男(2014/英=米=独)
ジョニー・トーの究極傑作『ドラッグ・ウォー 毒戦』と同年公開という憂き目を見なければ「働き者」映画年間一位も夢ではなかった。演出はハードボイルドを貫くが、物語の核心は作中人物の「情」にある。そこが『ドラッグ・ウォー 毒戦』に及ばないところであると同時に、胸を衝くこの映画の美点でもある。
レイチェル・マクアダムス、ニーナ・ホス、ロビン・ライトという綺麗どころのキャスティングは私のストライクゾーンの内外高低を巧みに突いた配球で、あっけなく三球三振に切って落とされてしまう。ブノワ・ドゥロームもアントン・コルベインの視覚的美意識と相性がよさそうだ。
取り立ててファンでなかった身からしても、やはりこのフィリップ・シーモア・ホフマンを心穏やかなまま見つめていることはできない。メカニカルなまでの労働従事と、その身体に張りついた疲労の精密な表現にかけて、惜しむらくも閉じられてしまった彼のキャリアの中でも『誰よりも狙われた男』はひときわ青白い光で輝き続けるだろう。
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