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[コメント] 殺人者たち(1964/米)

回想で長々とジョン・カサヴェテスアンジー・ディッキンソンのメロドラマをやられてもなあ、とは思う。セット撮影中心の五〇年代とロケーション撮影中心の七〇年代の中間としての六〇年代らしくセット・シーンとロケーション・シーンが交錯するが、ルックの統一に腐心した形跡はなく、これにも違和感を覚える。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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と批判的に書き出してみたが、むしろ不満を覚えるのはそこぐらいで、これはやっぱりとても面白い映画だ。オープニングの盲学校シークェンスから簡潔で高速度の暴力が炸裂するが、「花瓶の水を捨てる」という女性事務員を脅す仕方のいびつさもシーゲルらしさだろう。強盗団のひとりであったロバート・フィリップスを蒸し風呂に閉じ込めて事件のあらましを白状させるという演出の面白さも同様。

そしてクルー・ギャラガーが無茶苦茶すばらしい。リー・マーヴィンファンの私でさえも、このギャラガーはときにマーヴィン以上の輝きを見せていたと認めざるを得ない。飄々と行使する暴力。腕立て伏せなど意表を突いた所作。同じく「チャーリー」の相方であるという点も含めて、彼を『突破口!』のアンディ・ロビンソンの原型と見ることもできるだろうが、そのような見方では捉えきれない、複雑な面白さを持ったキャラクタだ。

もちろんマーヴィンも期待を裏切らぬすばらしさだ。抑えた芝居できかせる凄味の凄さ。底知れぬ悪の魅力。ちょっとした表情や振舞いが窺わせる知性とユーモア。そして乾いたシーゲル演出と独創的なマーヴィン演技が最もよく相乗効果を生み出したのは、やはりラストシーンだろう。サイレンサーを装着した銃を倒れ込みながら構えてこれほど様になる俳優が他にいるだろうか。ロナルド・レーガンとディッキンソンを容赦なく殺害した後に披露するしなやかな転倒演技にも驚愕する。それを零度の感情をもって見下ろす俯瞰カメラによって映画は幕を閉じる!

よいカットは多くあるけれども、特に今しがた述べたようなロングから俯瞰気味に撮ったカットの決まり具合は、これが「映画」だよなあと思わせる格好よさだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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