[コメント] クローズ・アップ(1990/イラン)
最強。こんな映画はアメリカにも日本にもフランスにも世界のどこにも存在しないということが、検閲の厳しさで知られるイラン映画の逆説的な自由と豊かさを示している。あるいはそれはイラン映画がどうこうではなく、キアロスタミの規格外の天才を証明するだけのものかもしれないが。
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映画を見終った人むけのレビューです。
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キアロスタミはこの作品について「私が演出したというより、ひとりでにできた映画だから監督したことを忘れてしまえる」と云っているそうだが、嘘つけ、である。圧倒的な、あまりにも圧倒的な演出力。サブジアンが逮捕される前後数分間の時間演出はまさに神業だ。雑誌記者が空き缶を蹴り、それが転がっていくことのなんという映画的豊穣。録音マイクの故障による距離感ともどかしさの醸成も比類ない(にもかかわらず、物語を進めるに当たっての必要最低限の情報はちゃんと観客に伝えている、ということが、故障が「嘘」であることを端的に物語っています)。サブジアンとモフセン・マフマルバフのバイクを追走するシーンのカッティングもまったく見事。さらに、即興的なはずの/に見えるダイアローグ演出の強度はしかしもはやブレッソン・小津級ではないか。この映画はちょっと凄すぎる。
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