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[コメント] 氾濫(1959/日)

よくもまあこんなキモチワルイ人々ばかり創造できたものだ(川崎敬三伊藤雄之助船越英二沢村貞子が四強)。このような業の深い人間たちが入り乱れるなか、川崎のようなタイプが最大の打算力を誇ってしたたかにしなやかに生き抜き、大役を担ってしまう。というのが映画の組織法として発見的である。
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佐分利信はその押し出しのよい見かけに反して、ここでは一貫して「戸惑い」の人である。全篇にわたって展開される佐分利の戸惑いこそがフィルムの感情の基底を成している。そして、そんな佐分利に対してさえ同情的でないというあたりが徹底した演出姿勢だ。情念がどろどろと渦巻いているのにドライ、という増村の特質は、若尾文子に対する執着でさえもが薄いこの映画においていっそう顕著である。

また、ここでも増村のラストカットは不気味で格好いい。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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