これを見た当時は思わなかったが、考えてみると中々の意欲作だと思う。明治・大正期のムードを現代の映画で再現しつつ面白く作るのはかなり難しいと思うのだ。

全体に原作を上手く映像化してあって、原作を何度も読み返した私も、最後までだれずに楽しめた。

原作ファンからいくつか文句を言わせてもらうと、「そんなに弱っちゃいけない」のセリフはこの話の序盤のキモだと思うので、もう少し表面的なところだけではなくインパクトが欲しい。あと、「誠は天の道なり」の後に主人公が心の中で付け加える「人の道にあらず」はちゃんと発音した方が私はいいと思うな。

文句はあるけど原作の雰囲気を良く表現できているので☆５。

ただ思うこととして、文芸作品を映像化するときに難しいのは、百合の花を鼻にかぶせながら主人公が考えてる内容とか、心臓の音を感じながら恐怖を感じるところとか、言葉で朗読しちゃうとおかしくなる部分があるので、このあたりをどう削りつつ盛り込むのかというのが難しいなと思った。自分だったら絶対と言っていいくらいできないな。