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[コメント] 隠し砦の三悪人(1958/日)

良くできた作品。他のレビュアーの意見にもある通り、映画に必要な全てを呑み込みつつ、無駄がない。特にお姫様役のキャラ造形がすばらしく、実際にはでこぼこコンビや三船敏郎より、彼女の方が物語の軸になっている。何度見ても楽しい映画。
サイモン64

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







リメーク版がまもなく封切りということで、2008.5.4に黒澤版DVDを購入して鑑賞。

20代の頃にテレビで初めて見たときは、あまりに評論家がすごいすごいと言い過ぎており、生来の天の邪鬼が邪魔して、素直に楽しめなかった。

年を食ってから見直すと、ストーリーの緩急の巧みさに加えて、各キャラクターの性格設定のうまさと、キャスティングの巧みさ、そして演技のすごさが相まって、またとない名作だなと感心した。

狂言回しである百姓二人(千秋実と藤原釜足)の卑怯で卑屈で臆病な性格。侍大将(三船敏郎)の豪快さ、お姫様(上原美佐)の凜とした気品。それぞれの性格がものすごく良く出ている。特にお姫様のスクッ、シャキッ、ビシッとした動作は滑稽の域に達しかねない微妙な勢いだが、この映画の軸として、三船を超える存在感がある。

演出上の動作はともかく、このお姫様、本心を隠し、涙を隠して部下を叱責し、適地脱出という目的のためには聾唖者として終始行動することもいとわず、領民の不遇を見てこれを助け、軍資金が馬と一緒に逃げても豪快に笑い飛ばし、百姓の卑怯な行動も寛容に見逃し、危機が迫っても顔色一つ変えず、敵将をもしかりとばして変心させる度量と肝っ玉。なるほどこのお姫様であればお家再興も夢物語ではないなと納得させられた。

最初は千秋・藤原のでこぼこコンビにばかり目がいっていたが、何度か見る内に、このお姫様のキャラ造形の良さが物語の中核になっていることに気づいた。

四人が組んずほぐれつ、必然的に物語が流れていく感じがすばらしい。

〜〜〜

話は変わるが、リメイク版では千秋実の役を松本潤がやると言う。しかし、それが元でキャラクター設定に余計な改変が加えられないことを祈りたい。まあ、心配しなくても、思う存分改変が加えられてると思うけど。

(評価:★5)

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