オリジナルを何回も繰り返し見た後で見てしまったので、本編を見ている間もオリジナルのカットが何度もフラッシュバックしてきて、純粋に楽しむことが出来なかった。

直前にオリジナルを見るのは、あまり良くないことだったかも知れないが、それもまたリメイク映画ゆえの宿命だろう。今回の "The Last Princess"版では、ストーリーの大幅な改変がなされているが、こういうのを見ると、「オリジナリティってそんなに大切なことなのかな？」と疑問に思ってしまう。歌舞伎や落語では、同じ台本であっても演者による違いが楽しめるように、オリジナルがあれだけ面白いお話であれば、そっくりそのままでも楽しめるだろうと思う。それをあえて変更してしまうのは、戦う前から戦意喪失しているような無気力さを感じてしまう。「下手の考え休むに似たり」とは言い過ぎだが、松本潤を主役に持ってきたためもあって、ストーリー改変は映画全体に及んでしまい、笑いの要素がごっそりと失われてしまったのはすごく残念だ。

また、「将の将たる姫の器」や、「姫の男言葉の理由」など、丁寧に描いて欲しい部分は軽〜くすっとばす一方で、関所のホモ番人とのエピソードは丁寧に描くなど、見ていて疑問に感じる部分が多々あった。ストーリーが変わってしまっている関係で仕方ない部分もあるかも知れないが、確実に押さえるべき部分が押さえられていないのはさみしい。

こうした残念な部分が鼻につき、しかも松潤が姫にタメ口聞き始めた時点から、あまりのありえなさに驚き、非常に退屈してしまった。いくら他の国のお姫様だからといって、無礼が許される時代ではないだろう。この映画は、「道明寺とつくしの物語」とは時代背景が異なるのである。

個々のキャストについて考えると、こんな感じ： 松本潤　　　中々の好演だが、ストーリーに制約をかける元凶でもあった。 長澤まさみ　舌が長い。今後年を取るにつれ、演じられる役が狭まると思う。 阿部寛　　　ぎょろ目が一本調子。 宮川大輔　　「すべらない話」同様、ここ一番で力が入りすぎる。 椎名桔平　　ダークサイドな感じがよく出ていて、本作で唯一格好良かった。

椎名桔平以外の主要人物の配役には少々疑問を感じる。 なので、CinemaScape の他のレビュアーからは「黒澤の呪いにかかったご老体」と言われてしまいそうだが、正直なところ、独立した映画としても高い評価は出来ない。むしろ、他人の鑑賞態度を制限してしまうような、そんな発言こそ慎むべきだろう。 「コレはコレ」と評価してもらいたいなら、そもそも『隠し砦の三悪人』を名乗るべきではないのだ。オリジナルと全く同じ脚本で勝負してきた森田-織田-豊川の『椿三十郎』は、その健闘ぶりが評価できたが、"The Last Princess" からは逃げを感じてしまう。特に、冒頭のあのシーンを再現しない理由が全くわからない。というか、すっ飛ばしてしまう積極的な理由が全く見つからない。

〜〜〜

一方、『スター・ウォーズ EP4』のパロディとしての側面は面白かった。 姫と松潤はレイアとルークであり、椎名はダースベイダー、阿部と宮川はオビワン＋ハン＋チューバッカ＋C3PO的役割であり、小鳥は R2-D2、建設中の城はデススターだ。スターウォーズのサウンドトラックを思わせるメロディやリズムも随所にあり、その点は楽しめた。

ただ、それがこの映画に対する評価をほんの少しだけ上げたとしても、やはり私としては低い評価にならざるを得ない。