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[コメント] アバター(2009/米)

主人公の心の推移が手にとるようにわかる演出のうまさに感服した。3Dでの劇場鑑賞は必須。
サイモン64

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







2009.1.20 109シネマズ箕面で IMAX 3D にて鑑賞。前が通路になっていて足の伸ばせる席を取ったのだが、IMAX 3Dが非常に大画面であることと、通路があるために角度が取れず、前の人の頭が少々じゃまになるところがあった。今日は 20:30開始の回を見たのだが、終了は23:20である。最寄り駅の千里中央は最終便が 23:40なので、エンドロールは最後まで見ることができなかった。

〜〜〜

下半身不随の傷痍海兵隊員ジェイクは、ある日、双子の兄の突然の死によって「アバター・プロジェクト」に代役として招かれる。遠く離れた惑星パンドラでの希少鉱物採取プロジェクトの一環で、原住民と地球人のDNAを合成して作られた「アバター」を遠隔操作して原住民に取り入る役目を担わされる。「アバター」は遺伝子の型が合致していないとシンクロできないらしく、双子の弟である主人公が代役に選ばれたという訳だ。鉱床の上に住んでいる原住民を、非暴力的手段で追い出すための手管である。突然招かれた故に何もかも事情がわかってない彼を軸に、説明っぽくなく状況説明を手短に重ねて行く。地球からこの星までは5年以上かかること、惑星パンドラの空気は人間には有害らしいこと、「アバター」まで使って懐柔を試みるも、どうも原住民に地球人は好かれていなさそうだということ等々...そして「アバター」にシンクロして、久々に取り戻した「歩ける足」に感激した主人公が、少々はじけすぎた後に眠りにつくと、もとの体で目を覚ます...と、ここまで約30分で、まるでテレビゲームのチュートリアルセクションみたいに物語のバックグラウンドが語られる。

しょっぱなから示される「下半身不随の生身の体を持つ元海兵隊員」と、「なんでも自由にできる強靭なアバターの肉体」の対比が巧みだ。

次にシンクロしたときには、惑星パンドラの独特の植物や、動物、猛獣の類が紹介され、そしてこの映画が3Dであることを改めて感じさせる高さや奥行きのある映像が展開される。さらに、この物語のヒロインである原住民女性と出会い、原住民集落に招待されるまでの運命的な道行が語られる。

こうして波状攻撃で現実とアバターを行ったり来たりしながら状況説明がなされるのだが、このあたりの演出が、飽きさせず、ダレさせず、キーポイントは確実に印象に残るように作ってあり、本当にうまさを感じる。

当初は下半身不随治療の手術代を稼ぐためにアバタープロジェクトに参加した主人公が、シンクロを繰り返す度に、パンドラの自然や、その自然に逆らわず共に生きる原住民達に同化し、いくつかの通過儀礼を経て集落の一員と見なされるようになる様は、見ているこっちまで主人公に同化していくような気にさせられる。

主人公がこんな具合で現地人に同化しているものだから、当然立ち退き交渉など進むはずもなく、しびれを切らした地球人が総攻撃を仕掛けるに至って、観客の誰ひとりとして地球側に肩入れするものがいないという状態まで持っていける演出の説得力がすばらしい。

物語のベースになっている自然賛美は「もののけ」とか「ナウシカ」に通じるものがあるし、「ダンス・ウィズ・ウルブス」的なものもあったり、いわゆるアメリカ先住民の運命とか、「9.11」の衝撃とか、いろいろなアメリカの歴史的出来事もミックスされていて、「誰も使いこなせない武器を使うことができたのは、部族の歴史で過去5人しかいない、彼らは伝説の酋長」なんていうのはいわゆるアーサー王に通じる英雄伝説だし、ストーリーは映画を半分くらい見たらオチまでわかってしまうくらい、しごく単純ではある。が、しかし、こんな単純な話でありながら、設定から相当手間をかけて作りこんだであろう惑星パンドラの風景、生態系、現地人の生活に加えて、要所要所でグッとこさせる演出により、160分の上映時間を飽きさせない。

終盤のクライマックス、アバターとのリンクが外れて瀕死の主人公を、現地人のヒロインが助けて、二人が見つめ合う下りは真面目に感動して泣けてしまうくらい良かった。はっきり言ってこれはネタバレだが、ネタバレしてようがしていまいが、ストーリーは先が簡単に読めるのであんまり関係ないのである。

いろいろな意味で画期的に面白い映画であり、大画面 3Dでの劇場鑑賞は必須と思われるので、劇場で上映している間に、何度も足を運びたいなと思っている。2Dで見たらどうなのかは想像もつかないが、できれば3Dで見た方が良いような気がする。特に IMAX 3D での飛び出し具合はハンパなく、それでいてこれみよがしな下品さもなく、久々に本当に本当にすごい映画を見たなと思った。

(評価:★5)

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