[コメント] アイデン&ティティ(2003/日)
「やらなきゃならないことをやるだけさ。だから、うまくいくんだよ」との映画のテーマを「映画的面白さとかじゃなくて、おれらのユートピアをつくるんだー」と解釈実践して、作者の机上の論理に映画的肉付けをすることを放棄した自慰映画。
そして、原作が「D.T.」なる童貞オーエン本を書いたみうらじゅんであり、主演が「童貞 SO YOUNG」なる曲で「童貞万歳!!」とシャウトしていたGOING STEADYの峯田であるだけでなく、映画そのものからも匂いが漂ってくる童貞くさい映画。
自慰映画であり、童貞くさい映画、つまり独りよがりの映画であるこの映画であるが、ひとりよがりだからダメって判断するのはもったいない。独りよがりが結果としてみなの心を動かすことがあるというのがこの映画のテーマなのだ。「やらなきゃならないことをやるだけさ。だから、うまくいくんだよ」と。
さて、ここで話はうまくまとまるはずだったのであろう。しかし映画は予想以上の独りよがり度をもっていた。つまり、別にこの映画の独りよがりがみなの心を動かさないのだ。童貞賛美映画が同時に童貞がもつサービス精神の無さ(あるいは空回り)をもってしまったというわけだ。ここまでくると、童貞映画としてすごすぎる。
このつまらない(決して否定的な意味ではない)映画が愛されるか愛されないか(何度も繰り返すが、つまらないと愛せないはイコールで繋がるものではない。)が、ロック(ここで初めて出てくる)がいまだ生きているか、それとも死んでしまったかのひとつの指標なのだろう。(この文章、括弧書きが多すぎますね…。)
たとえ主人公たちのバンドの曲がまったく心に響かなかろうと、それを自覚していてか、曲ではなくMCですべてを語ろうとしていたとしても、麻生久美子演じるヒロインがこの世の存在と思えないくらい超人的落ち着きをもっていてリアリティが欠如してようと、僕はこの的外れでいて真っ当な宣言が好きだ。
さて、ロックは本当に死んでしまったのだろうか?
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