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[コメント] Vフォー・ヴェンデッタ(2005/米=独)

VはヴィダルサスーンのV…ではない。
freetree

当たり前のことだが、体制側から見れば「V」はテロリストだし、自分も含めて民衆側から見れば「V」はヒーローのようにも映る。力によって体制を崩そうとすること自体は賛同しかねるが、己の信念にもとづいて独力で体制に立ち向かう「V」の姿は美しくさえある。

「恐怖」によって判断力を奪われ、独裁政権にその身をゆだねてしまった民衆の姿は、911以降の我々の姿でもあるし、太平洋戦争当時の日本の姿でもある。まさに、真の責任者を知りたければ鏡を見るだけでいいのである。

…と、こうして書いているとシリアス一辺倒の映画のように思われるかもしれないが、実際はかなりマンガチックだし、「V」は意外とお茶目だし、能面のような「V」の仮面にもシーンごとに様々な表情が宿る。

「V」はいわゆるヒーローではないし、敵も体制という強大なもので、とても一人で立ち向かえるようなものではない。実際、最終的には「V」も主導権を民衆に受け渡すわけだけど、その存在の大きさに変わりはない。

やはり絶対的な信念を持って行動する人間は魅力的だ。近年はやりの苦悩するヒーローも悪くはないが、あまりうじうじとやられてはカタルシスが感じられない(Vが苦悩してないとは言わないが)。

そういった面では本作は成功していると言えるし、台詞回しや音楽などから戯曲的な雰囲気すら醸し出している。フィクションであり、ある意味ノンフィクションであり、でもやはりフィクションなのである。続編…は難しいだろうが、同じスタッフでまた同様の作品が作られることに期待したい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)おーい粗茶[*]

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