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[コメント] トウキョウソナタ(2008/日=オランダ=香港)

映画的強度に満ちたショット群も衒いのあるコンポジションにてSO-SO
junojuna

 リアルのような素振りを見せてリアルでないところや半ば投げやりないかがわしさなど黒沢清らしさが光った作品である。津田寛治が配給を受ける人々の列へと入っていくショットや小泉今日子がひとり波打ち際に佇むショットなどには映画的興奮を体現したフィルムの輝きがある。しかし、相変わらずの衒いのあるシークェンスのプロットはやはり映画としてのパッケージを拒絶して座りの悪いコンテンツと化している。これは丸く収まらないことを主張しての確信犯的な異物混入なのであろうが、本作においてはベースとなっているドラマの骨格がしっかりしているだけにその飛躍ぶりがあまりにも騒々しくこの点については丹念にトリートメントすべきであった。例外なく映画には意外性やオフビートな逸脱によって輝きを増しもするだろう。さりとてそれはあくまでも映画の運動による効果的な変拍子としての都合、あるいは不協和音の妙といってもよいだろう。ノートのコンポジションの匙加減を誤ればその限りではない。もうそろそろそうした作劇も卒業して良い頃である。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)赤い戦車[*]

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