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[コメント] ザ・バンク 堕ちた巨像(2009/米=独=英)

クライムサスペンスの重厚なムードを湛えながらも鬼気迫る深淵に到達しえなかったSO-SOムービー
junojuna

 「シリアス」な映画は何をもってして「シリアス」といえるのかということを考えさせられる「シリアス」な風合いをもつ映画である。その風合いとは犯罪をモチーフとしたノワール的質感をもったムードの描写を指しており、言い換えるなら「それっぽい」というだけの実質が伴わない見せ掛けのスタイリングであることを言っている。極端に言えば「トム・ティクヴァ サスペンス劇場」というタイトルで量産されてもいい感じのジャンルムービーに堕してしまった模様。いわくサスペンスとは、スリルに富んだプロットによる物語の内容は然ることながら、見てしまった、見えてしまったという悔悟に苛まれるカメラの視点にこそ有らしめる。しかし無慈悲にもこの映画には文体の中に秘められてこそ畏怖の念を抱ける切実の強度なるものが明らかに不足しており、ひいてはティクヴァがこだわるサスペンス空間には、躍動性を感じることはできても深淵を見ることはできないという不満が絶えず付きまとうのだ。ただ一瞬でも肝を躙られる映画の衝動が望まれる惜しい作品。

(評価:★3)

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