コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 巴里の女性(1923/米)

理想家チャップリンの装置的ドラマツルギーが抒情の固さを生んでSO-SO
junojuna

 チャップリンがグリフィスダグラス・フェアバンクスらと共同で設立したユナイテッド・アーティスツでの第1回作品となった意欲的なシリアスドラマである。シリアスタッチという意味では、1921年に製作された『キッド』がひとつの成果を見せたが、本作はチャーリー映画ではないところに、チャップリンの純粋な演出力を開陳することとなり、その意味ではチャップリンフィルモグラフィにおいて特異な位置にある。しかし、ここでもまだチャップリンの装置的な作劇術が、抒情を呼ぶ仕種を得てはいても、真に説得力を持って突き動かされる描写には至らず、また、残念ながらエドナ・パーヴィアンスの演技力、役者としてのパーソナリティでは、そうした演出の頑なさを凌駕するほどの技量、魅力には届かないため、評価にも限界がある惜しい作品である。批評家からは賞賛を得たが、興行的には散々な結果となったようである。それに心を痛めたチャップリンは次作『黄金狂時代』でリベンジを果たし、それ以降の輝かしいフィルモグラフィは映画史に刻まれた宝となった。その意味でも本作をチャップリンの真の最初の作品と呼ぶことには頷ける。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。