今から１００年前の映画の狂熱が、画面からもほとばしる驚異的な作品である。作品を通して世界を語るということを手に入れたグリフィスの万能感が満面にたたえられ、それを成し遂げたことには拍手を贈らざるを得ない。よく言われる人種差別的な題材を扱ったという問題などは、さして論を俟たない。映画の興行的な側面から言っても、当時の社会状況が反映されただけに過ぎないであろう。グリフィスの方が何枚も上手だ。その後に続くアメリカ映画のヒューマニズム路線の反面教師的な存在となったと思えば、これまた史的に十分な功績を残したともいえる。しかし、白人が黒人を演じるという舞台世界は、われわれにおぞましさを伝えて、まさにトラウマとなる映画の記憶だ。個人的には、物語として黒人を殺戮することよりも、黒人を「黒く」「唇があつく」「好色」であると描こうとするステロタイプ化について、差別的な視座を感じる。決して良い悪いではないが、人間の自由な想像力の飛躍が乱暴に横溢していくことの端緒がうかがえるシーンである。