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[コメント] キートンの恋愛三代記(1923/米)

初長編作の気負いか構成に連鎖的な含み益なしでSO-SO
junojuna

 キートン・プロ初の長編作という意欲的な43分。この当時、チャップリンロイドも長編での成功をものにしていたということもあってか、少々気負いが見える平凡な作品である。ここでもキートンのパロディは、D・W・グリフィスの『イントレランス』や1907年作シドニー・オルコットなるカナダ人による『ベン・ハー』のチャリオット・レースなどを挿入し、なかなか諧謔的でモダンな一面を垣間見せている。この長編を見るにつけ、キートンのアクションスタイルというものは、チャップリンがムーヴメントによってその無機質な空間に対して彩りを添えていくのに対し、キートンのそれは、ポーズによって間合いの滑稽を生む、スタティックなパフォーマンスの志向性があることに気づく。 それは能動と受動と置き換えることができ、キートンの場合、受け身であることで事象の価値転換を笑いに翻訳し、そのインパクトが単純なファルスを超えたナンセンスの強度を持ちえる達成があるところに豊かさがあるのだ。これは幼き頃のヴォードヴィル時代、父ジョーから徹底して笑わないことを要求された生粋の芸人根性が成せる技であり、その唯一無二にして前人未到なマゾヒスティックな芸風は、ゆえにアメリカにおいて、かのチャップリンをさしおき「喜劇王」と奉られる所以だろう。また淀川氏曰く、「キートンの作風はフランスタッチである」と評される由も、前述のスタティックな情動性を言いえた評価なのではないか。上手くはないが狙いに頷ける作品であった。

(評価:★3)

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