コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 乙女ごころ三人姉妹(1935/日)

三味線流しの受ける数々の不条理な仕打ち。これは当時の現代劇なのだ。戦前映画のリアリズムは殺伐としている。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







三味線弾こうとしたらお店にレコードかけられるとか。メロドラマらしいイジワルがリアルにはまっている。じっと耐え忍ぶ堤真佐子、悪魔のような母親の林千歳が印象に残る。築地小劇場看板の細川ちか子滝沢修の共演は豪華で滝沢はやたら渋い。梅園竜子は声が甲高すぎるが別嬪で、レヴューのダンスは当時ギリギリの露出なんだろう。

話は終盤崩壊している。ドスで胸刺された堤真佐子が駅へ駆けつけて姉を見送った後その場で死んでしまうのは余りにもやり過ぎメロドラマだし、彼女のために医者を呼びに行ったはずの大川平三郎が駅へ向かうのもあり得ない。やり過ぎだろう。

冒頭ほかの浅草撮影は異常にキャメラ振り回しており、なんとナルセにしてロシア・アヴァンギャルドの影響が見られる。ベストショットは夜半の電球ひとつだけぶら下がった鉄骨を延々映すショットで極めて異様。リアリズムな物語との対照がすごい。PCL10作目、キャメラが寄ってくるタイトルもアヴァンギャルド。

あと、中盤で音声がBGMだけになり、堤が埠頭で突然に写真撮られるユーモラスな件がサイレントタッチで撮られているのも感じいい。今でもたまに観られる手法だ。シークエンスをピンボケで繋ぐ技は今観ると煩瑣だが、いろいろ試していたのだなあと思う。映像がブツブツ飛ぶのはフィルムが切り取られているのだろうか。悪い人もいるものである。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。