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[コメント] 現代やくざ 与太者の掟(1969/日)

序盤には『冬の華』の前哨戦のようなメロウがあり、雪駄履いたジャン・ギャバンのような文太と新宿表裏の侘し気な描写に抜群の求心力があったのに、ここから山城新伍のコメディに展開するセンスが信じられない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







序盤はとてもいい。出所した文太が真っすぐ向かったのが名曲喫茶「白馬」(!)とはすでに『冬の華』。回想のオルガン弾き藤純子の奏でるメロディは唐獅子牡丹。どんな名曲喫茶だ。絡むヤクザから彼女を救って喧嘩して逮捕。藤はムショに手紙をくれたが二年前から不通で、住所の康アパートを訪ねてももういなかった。そしてラストの文太突撃にあたり、花屋で子供抱く藤を見て踏ん切りをつけるのだった。

文太はパチンコ屋で台を叩き、店員に「オートメーションになっていますから叩かないでください」と云われて、五年もムショにいると娑婆のことが判らないという意味のことを隠語で隣席した志村喬にボヤいている。志村は「背中の墨は消せるもんじゃねえ」と後悔の刺青師。すでにハイウェイが完成している新宿西口のロータリー前で文太が、パチンコ屋店員田村奈巳をチンピラ山城新伍たちから救い、「こんなとこウロウロするなよ狼の餌食になるぜ」と忠告する。当時は駅前も危険地帯だったらしい。この幾何学的な背景がいい。このとき最高に別嬪の田村は文太にラブアタックし、文太は藤のハンカチ握りしめて彼女を断るのだった。

中盤からは山城新伍らドタバタ集団が部下になって話はコメディに振れて躁鬱気質になり、メロウな雰囲気がぶち壊しになったのは残念。降旗は『非行少女ヨーコ』もヌーヴェルヴァーグと家族愛のごった煮、『地獄の掟に明日はない』もヤクザ映画と原爆症のごった煮だったもので、デヴュー当時はそういう作風だったのだろう。吃音を揶揄われるドモリの貞砂塚秀夫というキャラが時代。

以下は、文太と生まれついてのヤクザもの待田京介との友情と確執とか、流しの艶歌のマイク横取りして登場して近代化した組に文句つける『総長賭博』キャラの若山富三郎とかの定番。志村も田村奈己も終盤消えてしまうのが詰まらない。ラストも相変わらずの文太対安部徹の対決だが、大量ネオンの美術と斜めキャメラが格好よかった。

(評価:★3)

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