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[コメント] 潜行者(1947/米)

奇を衒ってはじめて途中で止めちゃうのだが、それが別に変節でもなく周到に思えるから不思議だ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







湖中の女』ほど厳密でない主観キャメラが開始から21分まで続く。主観でトム・ダンドリーをぶん殴るカットが珍しくていい。そして整形、ああだから主観なのかとよく判らないが納得させられる。「厭な客なら(顔を)ブルドッグにできる」などと喋るハウスリー・スティーヴンソンがエグい。この整形医、術後の点検もしないのだ。顔中に間抜けな包帯して明け方のシスコを8キロもほっつき歩くハンフリー・ボガートがなんか惨めで心に沁みる。

包帯が取られるのは開始1時間1分後。変な顔に整形されていたら面白かったのだが普通にボギーで後は通常モードになるのだが、それでもときどきいい味がある。バコールと別れて出発して朝飯喰って、ひと月前のスポーツ欄の話題を喋ってしまって刑事に咎められる件がいい。ここ、全体から浮いている意味のない件なんだが、妙なリアルがあった。ボギーが自動車の前に飛び出して、刑事が慌てて飛び出して轢かれるショットもいい。アグネス・ムーアヘッドが狂ったように転落死する件もいい。

整形後のボギーにバコールが惚れるのは唐突で、ああ夫婦だから仕方ないかと思ってしまう。犯人探しはどうにも偶然過ぎて面白くないが、そこを見る映画でもなかろう。私的ベストショットは冒頭、手が見えるドラム缶が振動でダンプから崖下に転落する件。路面電車の旋回ロケも愉しい。出演料の半分しか働かないボギーの費用対効果から本作の手法は廃れたとのこと。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)jollyjoker[*]

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