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[コメント] 五人の兄妹(1939/日)

兄妹で歩く朝の湾曲した土手は美しく、焚書の火鉢の炎は禍々しい。画で語るスタンスが優れており、マッチの使い方はもうひとつだが、割れたボールを見送る大塚君代はとても美しい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







防空演習の件には驚いた。まだ30年代の映画なのに何やっているんだろう思って調べると、1928年以来とある。国民の危機感を煽っていたのだろうという評もあった。そういえば韓国や台湾では今でも定期的にあるらしい。日本もこの調子なら早晩再開されるだろう。

本作、ラストがいい。初出勤の四男を残して母と長兄は田舎へ遁走(別に母親までついて行く理由がないように思うが、葛城文子が毅然として行動するとそれだけで納得させられてしまう)、工場長は長兄を呼び戻そうとし(二等列車に電報が届くのはおかしいのでは)、田舎では長兄の昔の恋人の野辺送り、と畳み込み、収束というには何も束ねていないと思うが、全体に漂う人情の機微により強引に納得させてしまう。ラス前の古本屋の主人もそうだ。すでにして木下らしい愛すべきベタさが全開だった。

年齢を超越した笠智衆にとって「それから13年後」は楽勝だっただろう。冒頭と写真しか登場しない藤野秀夫がクレジットのトップというのは家父長制が運命だった時代を記録しているよう。しかし折に触れて挿入される女性のユーモアを見ると、戦前も戦後も違わないなとほっとさせられる処がある。

(評価:★4)

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