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[コメント] 女(1948/日)

「赤とんぼ」の斉唱が遠くから聞こえてくると小沢栄太郎はああやんなっちまったなと突然に嘆き始め、木下劇場が始まる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







小沢から逃げようとする水戸光子に語られるこの告白、とてつもなく幼児的で純朴で、まるでチェーホフのようだ。さらに、純朴さのなかに狡猾さ、後ろ向きの誘惑が盛り込まれているニュアンス、それがまさに幼児性なのだが、これを全身から醸し出す小沢は実にうまい。悪党特有の童子のような笑顔と涙でこの男の造形を綴っている。彼の後年の悪役はみな、過去にこのような経験を経ていると見定めると面白かろうと思う。

途中で覗いている子供に気づいて無茶苦茶に石を投げ出す癇性の描写など細かいのもいい。自分が水戸だったらこの男についていくかどうか、悩むだろうなあ、というところで話は後半に進むのであった。

(評価:★4)

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