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[コメント] やくざ観音 情女仁義(1973/日)

女の性により出現したオイディプスを描く、ロマンポルノならではの佳作
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







清玄はオイディプスのように、しかしあくまで自覚的に父親を殺し、母親ではないが妹と同衾する。この化物をこの世に導いたのは彼の母親と妹の好色であること、仏教は悪魔に相対したときに別の顔を見せることが具体的に描写され続ける。

そのような、ともすれば図式的とも思えるホンに映画は血肉を与えるのに成功しており、まるで本作のために俳優になったような岡崎二朗はやたら迫力があり、安藤の丹精なキャメラも求心力がある。突然訪れる雨中のキスシーンはとりわけ美しい。父親を殺害した民謡酒場で後日、民謡に併せて清玄に笛を吹かせる何ともいえないユーモアも妙に印象的。

音楽も素晴らしい。バッハのバロックにのせた老婆の念仏は眼前で展開される惨事を相対化しており、夫婦円満を歌う貝殻節がイロニーとして効いている。『恋人たちは濡れた』にせよ『しのび肌』にせよ、男が主人公の神代ポルノは傑作が多い。

(評価:★4)

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