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[コメント] 処刑の丘(1976/露)

ソ連は無茶な国家だったがナチから被った被害が割り引かれる訳ではない。イスラエルの蛮行でユダヤ人の歴史的被害が相殺される訳ではないのと同じだ。歴史の悲劇は折り重なり被害者は容易に加害者になる。本作はナチ協力でもってその典型を描いている。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本作も『カティンの森』とワンセットで観られなければならない。

本作の主題は対ナチ協力。これはフランスはじめ他国でも他人事でないだろう。「民警になれ」と云われている(唆すポルトノフという予審判事はアナトーリ・ソロニーツィンだ)。「良心より行動だ」と民警になって、そして何もできないのだ。インサイダーとはそんなものだ。寝返ったら回りの兵隊が親しげに新入りと云っている光景がすごいものがある。ロシア語喋っているし、彼等もみな寝返ったのだろう。

繊細な描写の積み重ねが素晴らしい。全編を雪が覆っている。肩車した子供が横に伸びた樹の幹に捉まるとき、親は銃殺されて地面に倒れる。裸木からの落雪が頭に落ちる。絶滅した村の洗濯紐。幽閉される地下室のネズミたち。遠吠えし続ける野犬。☆型の焼き印とは何だろう。首吊りの足場にする切り株。シンセの不協和音もの凄い。便所で自殺できず、生き恥晒して大地に叫ぶラスト。まるで小津のように、大地を捉えた美しい冒頭の数カットが反復されるのだった。

(評価:★4)

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