[コメント] 波止場(1954/米)
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もうひとつは中盤の鈴木瑞穂そっくりのカール・マルデンの神父(カソリック映画だ)の演説の件で、筏で船尾から甲板へ浮上するショットに神的なものが篭められている。ここが教会だと彼は語る。
鳩舎のある屋上もいいし、最後の海辺の小屋の裏での格闘(見せない)もいい。水際はヴィゴを想起してしまう。ただ、シカトしていた作業員たちが制裁をみてリー・J・コッブからマーロン・ブランドに付く、という転換の群像劇はイマイチ上手くいっていない。その前段の、マーロン・ブランドが裁判で証言したからシカトする作業員という前振りも上手くない。どういう心理なのかよく判らない。
なお、本作は共産主義の映画ではなくカソリックの映画であり、監督の来歴からの類推なんだろうが、コミュニズム的なアジは一箇所もない。「神は貴方たちの職を求める列に一緒に並んでおられる」という中盤の神父の説教こそが重要である。労組を牛耳るマフィアのリー・J・コッブという設定であるが、もちろん労組はコミュニズムのものではない。
回心前のマーロン・ブランド、エヴァ・マリー・セイントとの対話が興味深い。「他人の悩みは自分の悩みでもあるわ」「君って甘いんだな」。(これはマフィアが「仕事」発注時に繰り返す「これは遊びじゃないんだ」に通底する)「俺の主義はやられる前にやれ、さ」「思いやりなんて損するだけさ」「生きるためには、イキのいい奴と組むんだ」。そういう連中っているものである。学生の頃、京都からキタの確か大毎地下まで観に行って、寝てしまった作品。だから通して観たのは今回はじめてだった。
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