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[コメント] 光州5・18(2007/韓国)

この「立ち上がって戦おう」の市民軍の抵抗こそが、日本の市民が経験していないことなんだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







微妙で云いにくいことだが、市民が民主化のために抵抗の銃を持つ本作は、現在の本邦ではタブーになった処がある。日本共産党は非暴力路線をひた走り、反撥した新左翼は銃を担いでほぼ壊滅した。日本人で本作のように銃の知識がある市民などほとんどいない。民主化の方策は無数にある訳で、暴力革命じゃないと駄目、とは全然思わない。しかし、国家の暴力をどう扱うかにリアリズムを欠くと足元を救われるだろう。

個人的には『子猫をお願い』のイ・ヨウォンを発見して嬉しかった。助けて殺して「本当に御免なさい」泣きながらとパニックになり謝る件が忘れ難い。彼女が広報車で夜中、無人の道路で抵抗を訴えて走り回る件が記憶に残る。呼応する声は暗闇のなかから何も聞こえない。抵抗に市民全員が賛同した訳ではないのだ。彼女らの抵抗に協力してくれなかった市民が大勢いたことをこのショットは示すのだろう。ヨウォンを見捨てた市民の後悔こそが、民主化の原動力ではなかったのだろうか。

冗談連発の作劇は確かに邪魔だが、語り難い内容への製作者の過剰防衛に見えるところがある。そもそも冒頭、北朝鮮を目指さず南下してくる戒厳軍も何かの冗談に見えてしまう。一番酷いと思ったのが知事のヘリからの撤収宣言の嘘。アン・ソンギはこのような役を託されるべき俳優なのだろう。ラストショットは花嫁以外全員死者の結婚写真。

(評価:★4)

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