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[コメント] ゼロ・ダーク・サーティ(2012/米)

アルカイダへの拷問を価値判断抜き(価値中立)のつもりで描いてもの凄い。このCIAたちは死んだら自分が地獄に堕ちるのも織り込み済なのだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







こういうのは資本主義社会での非情な金儲けと平衡関係にあり、リッチな観客層に苦み走った「共感」を呼んだりするのだろう。過去の事件を描いてドライなものだが、この精神で未来を描かれたらたまったものではないと思う。

CIA職員話。9.11から二年後、パキスタン。検問。車の下に差し込む。イスラマハードアメリカ大使館。マヤ着任。サウジ・グループのアンマルを拷問。ハゼムアルカシミーリのメルアド教えろ、両手を天井から伸びたワイヤーで縛られ、布被せて水責め。マヤ手伝わされる。デスメタル聴かされる。ジュース呑ませて泣き落とし。女の前でパンツ脱がせる。「ハリドはお前が知っていると認めているんだぞ」。犬の首輪はめて箱に入れて閉めて、前は睡眠不足で喋ったとカマかけ。

アブ・アフメドについて聞き出す。コンピュータ技師。ビン・ラディンの部下らしい。彼のことを拷問ビデオで確認する女。蝋燭の蝋垂らしという拷問もある。彼女はマニアかも知れないとも見えるギリギリの線の描写だった。別口で導師の伝言伝える重要な伝言者との情報。

ロンドンのいい加減なバス爆破。ファラジ逮捕。アフガン施設。中庭の幾つものゲージに赤尽くめの囚人服の留置者入れているのが記憶に残るショットだが、あれは日光浴をさせているのだろうか(飼っている猿の籠と前後に並べられている)。「普通の刑務所と違って待遇は貴方次第よ」主役だった男は転職希望。「男の裸は見厭きた」「虐待に批難が集まっている。いずれ査察が入るぞ」。

パキスタンのレストランの爆発は爆風が迫力ある。一方、パキスタンの部族地帯は描写したら面白そうな画なのに簡単なのが詰まらない。バラウイという者と接触。アフガンのチャップマン基地。自爆テロ。アブ・アフメド死亡の自供。いいことなし。「殺す相手を見つけることが君たちの仕事だ」とネジ巻く上司もすごい。

イブラハム・サイードこそアブ・アハメド、という資料が出てくる。死んだのは兄と山勘。クウェートでランボルギーニと交換で情報ゲット。傍受。上司にハッタリ使ってチームつくって町中をドライブ。パキスタン、ラワルピンディ、ペシャワル。ここは異国の町並みと人々をいかにも怪し気に撮る訳で(『北北西』が想起される)それなりに愉しい。主人公も銃撃される。守衛は職務怠慢だろう。敵はこういうときに爆弾放り込めばいいのに、そうしないのが娯楽映画の常である。

怪しい豪邸見つけて新展開。すでに模型あり。邸内を探る日々。話は単純になる。男女比1対1の法則で隠れた家族とビン・ラディンを推測しているが、大邸宅ならお手伝いとかいるだろうに。上官はビン・ラディンだという確証を要求。いる確率は、主人公だけ100%。連絡員がいればいるはず。兵士にいなければ帰ってこいと。

突入シーンは暗すぎるしカット割りが多過ぎて迫力はなく、ただ躊躇なく殺しまくるのを見ると、そういえば捕まえて裁判にかけるなんて意図は何もなかったんだなあと思わされる。一部兵士は殺害にショックを受けているのが描写されている。

最後に主人公はひと筋涙を流すが、救われまいし、燃料バカ喰いする飛行機を彼女専用で飛ばす米軍はどうかしているし、この蕩尽を格好いいと思う観客もどうかしているだろうと思われた。

(評価:★3)

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