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[コメント] 晩菊(1954/日)

稲妻』『晩菊』『流れる』。女の群像を描いた成瀬=田中の傑作群。
寒山

**ネタバレ注意**
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三作とも台詞の優れているのに惚れ惚れする。世渡りのどうしようもなさが迫ってくる。望月優子は上手すぎて周囲を置いてきぼりにしてしまうのが常だが、ここでは細川ちか子がたおやかに受け止め、二人が子供を持つことの嘆きと誇りを語り合う晩飯の件(杉村春子への皮肉へと重層化される)は、田中澄江の傑作のひとつだと思う。望月と有馬稲子の親子もいい。

路地の描写は成瀬作品でもピカ一ではないだろうか。杉村が路地を小走りに駆け回る姿は、借金取りの老婆の典型をフィルムに定着させている。見明凡太郎が杉村宅を訪れる件の、玄関の硝子越しのショットは禍々しく、印象に残る(小津は『東京暮色』(57)で極めて類似したショットを使っているが、パクったのではないかな)。杉村の「女には女の準備があるんですからね」辺りの迫力に至っては、物凄いとしかいいようがない。

残念なのは、クライマックスで突然ナレーションを入れる手法が必然性を欠くこと、及び加東大介の造形が煮詰まらず、ラストが決まっていないこと。杉村と加東のその後を想像するにはいかにも情報不足(切符を探す杉村とは何なのか)、見事に収束の決まる他の二作と比べると見劣りがする。和解の『稲妻』と残酷な『流れる』に鋏まれた途中経過という印象。

(評価:★4)

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