[コメント] 女神の見えざる手(2016/仏=米)
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議会のロビー活動、関係団体が民間会社にざっくり委託するシステム。「銃規制派はスーツ着たヒッピー集団よ」「銃反対の支持者を増やすのよ。熱意を示すには?」「カネ!」寄付集めを草の根運動と呼ぶ活動がまた面白い。アメリカの政治システムが垣間見える日本のリベラルが一皮剥けないのは、無償ボランティアが正しいという固定観念があるからではないかと思わされる。集めたカネはどう使うのだだろう。巨大ネズミにも使ったが、その他はどうなんだろう(テレビスポットという会話が一箇所あったが)、その辺もっと教えてほしかった。
議会がこんなに白熱するのは、党議拘束という下らないシステムの敷居が低いからで、議員は個人として尊重され、政党の働き蜂ではないからだ。羨ましいことである。よくテレビで見かける聴聞会の光景も興味深い。
そんななか、変質狂ぶりが徐々に判明するジェシカ・チャステインの造形が面白い。ガービッジのシャーリー・マンソンが想起させられる(「パラノイア」ってヒット曲もあった)。学生時代からパラノイアだったとボソッとなされる告白などすごい。そもそも、摩天楼でいつも始まる知的会話の早口大会は変質狂ぎみで(このソフィスケーティッドコメディの手法を市川崑や川島雄三らは輸入したが、大して根付かなかった)映画はこれへの揶揄いの視点がある。そして最後の囚人服で痛快逆転劇だと判明する話法は、ある種の達成感が伝わってきていいものだった。
ただ、アリソン・ピルは残してきたスパイでした、みたいなゴチャゴチャ感が終盤に噴出する演出は好みでない。インドネシアのパーム油については興味があるので、ネタだけで終わって残念な気がした。邦題がいい。あっちもこっちも阿呆だらけだが、にもかかわらず正義は達成される、というオプティミズム。
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