南国の背景になった舞台から南国人の行列がぞろぞろ降りてきて唐突に消える。そして催眠術で判事を車に乗せで自殺させようとするのだった。

ここがなければ残念な出来だっただろう。あとは獄死するアウド・エゲーテ・ニッセンの一連のショットが、監獄の背景の白が効いていていい画だった。贋札づくりの裏町の曲がる階段の美術、字幕が乱入する「済南府」、札がハートのエースばかりのトランプ、収束の岡本太郎の太陽の塔みたいな幻覚。どれも派手だがイマイチ深みに欠ける。

千田是也似のマブセのルドルフ・クライン・ロッゲの造形は平凡。民衆扇動の失敗ぐらいですぐに引越しでは大した悪人とも思えない。部下はみんなアル中だし。「精神分析学」については、当時は如何わしく見られていたという傍証なのだろう。瞼の重いトルド侯爵夫人のゲルトルート・ヴェルカーが南果歩みたいで良かった。「賭博見ているのが好き」「人生で退屈でないのは博打だけです」なんて会話が退廃していて印象的だったが、それなら長々と幽閉などせず博打地獄に晒したほうが盛り上がっただろうに。

やたらアイリスインでのシークエンス切り上げが多用される。円形の賭場の件、ダンスで姐さんが乳首出している全身ショットがあったような。最初の契約泥棒の件、電柱から盗電のように電話するショットが面白かった。あんなことできたのだろうか。何で盲人に贋札作らせていたのだろう。最後は何で軍隊が出動するのだろう。