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[コメント] アフリカン・カンフー・ナチス(2020/独=日)

いったいどういう文脈で出てきた映画なのか、日本では「自虐史観」で大笑いできる快作として受容されたんだろう。劇場で笑ったら潜伏者にチェックされて帰りの夜道で囲まれそうなスリルがあった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ガーナに亡命潜伏していたヒトラー、東条とゲーリングが復活の狼煙を上げる。東條の指導で空手をつかって顔が白塗りになるガーナアーリア人。ガーナ・ドイツ・日本の枢軸国(「ポンコツのイタリアは除外」!)。旭日旗の日の丸に鍵十字が描かれた旗に呪いがかけられている。空手(唐手)は沖縄の武道であり、戦中は柔道より格下に位置付けられたのはクロサワ『姿三四郎』でばっちり記録されている。だからこの設定はオカシイのだが、こんなこと書いても仕方ないと諦めさせられるB級映画。

東條は日本語が上手過ぎてリアル。ヒトラーに共同党首と紹介されて語る。「死ぬまで戦うのであります。美しい日本、天皇陛下万歳」ガーナアーリアたちは万歳と和する。昔はヒトラー、ムッソリーニと並べられるのは昭和天皇だった訳で、東條では幾らでも首のすげ替えの効く小物感が漂う。この選手交代は何なのか、にわかには判らない。きっと政治的配慮だろう。

野外の商店街を東條はチンピラのようにガーナアーリアたちと並んで乱暴して歩く。ミカジメ料払わないと皆殺しにされる。小さいんだろうと女たちに揶揄われて隆起する逸物の影をフィルムに叩きつけている。その辺の公園でカンフー対空手対決が始まり、非情な東條数本まとめて指詰めをする。

主人公は森で酔拳風ほかの荒修行。対するアデーほかは中国のカンフーと云われる影蛇拳を学んでいる。指導者はアフリカ人だが、中国のカンフー対日本の空手という対決が強調されている。この辺り、一帯一路経済圏構想の文化政策という気がするがどうなんだろう。

敵地のステージで異種格闘技。東條は最初は扇子持って相撲風の行事だが、勝ち上がったアデーと対決。美しい国日本のためとか云いながらとっとと負けて、例のへんな旗燃やされてヒトラーの首は転がり、東條も呪いが解けたらしくラストはピンクのシャツ着て商店街で愛想よく商売している。

撮影編集はデジタルらしいコマ落としと伸縮自在のスローモーションの編集から成り、ときどき船酔い感がある。

(評価:★4)

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