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[コメント] 反逆児(1961/日)

家康の佐野周二をもっと掘り下げてほしかった。主役を間違えていると思う。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







詰め腹を切るという慣用句の具体的な説明のような実話で、覇権国と周辺小国の不均衡な関係と見れば類例は世界中にあるだろうという普遍性、さもあらんというリアリティがある。この切り口が最大の見処であり、見処を盛り上げていたのは家康の佐野周二だった。息子自害の圧力に抵抗もせず仕方がないんだと諦めきった親父の造形に、複雑な求心力がある。

しかし、何でそういう判断に至るのか、映画は殆ど語ろうとしない。これはたいへん惜しいことだという感想を持った。佐野がどういう窮状にいるのかをもっと観たかったのだ。序盤、長篠の合戦で敗走する佐野の頼りなさげな振る舞いも印象に残るものだったが、ここと上記の件との間、佐野は画面に殆ど登場しない。本作は主役の選定を間違えたと思う。主役の錦之助は常識人で、ただ妻の岩崎加根子との交流にボタンの掛け違いがあった、その結果の悲劇という小さな処に話が纏まってしまっている。

他に心に残ったのは三箇所。ひとつは偶然の逢引と姦計から錦之助の側室に進んで入ろうとする桜町弘子の屈託。ひとつは序盤、母の杉村春子の怨念呪術の件で青黒いフィルムをかけた撮影の外連。もうひとつは杉村と岩崎の対決の迫力。本作は岩崎の代表作だろう。

しかし、つまらないシーンも多かった。なぜなのか、屋外セットの撮影は照明が安っぽくセットともろ判りで退屈、中盤の杉村の藁人形を打つ件も同様でトンデモ映画に近い。月形龍之介の信長はいつもの彼と違うユーモラスで面白いのだが、作品上の残酷な信長とはちょっと違う造形だと感じた。東千代之助他の家臣たちは生真面目なだけで鬱陶しく錦之助の悲劇を安っぽくしており、ラストの切腹の件をダラダラ引き延ばすばかりで退屈させられた。錦之助幼少時の背丈を親子で計った柱の傷の回想もダサくてしんどい。タイトルはよく判らない、錦之助は別に反逆などしていない。隠密の河野秋武はとてもいい、もっと活躍してほしかった。

(評価:★3)

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