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[コメント] ラブ・レター(1998/日)

これぞ怒りの森崎の究極完成形。その演出はすでにベタがどうとかなどという次元を超越している。眉毛剃り落とした山本太郎のギャグ担当がとてもいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







厚労省がアジアツアーに「いってらっしゃい、エイズに気をつけて」なる啓発ポスターを刷った時代。00年代以前は中国娘もフィリピン女性同様だったと記録されている。この売春方法ノウハウは、現在は外国人実習生という奴隷制によって、縫製その他一般業種にまで広がっている。日本ってこんな国なのよ。つくづく厭になる。映画は千葉郊外(千倉とある)の安プレハブ、外から施錠され二階は森のような二段ベッド、という視覚化でこの奴隷制度を浮かび上がらせた。

クライマックスの「ラブ・レター」朗読が素晴らしい。『遠雷』のジョニー大倉の長独白が想起される。手紙朗読は映画的ではない、などと素人みたいな感想を云ってはいけない。朗読劇を舐めてはいけない。回想の寸劇にしない処にも味があるのだ。中井貴一にしか一目ぼれできない貧しさが寂しい。

コウ・チュウの記憶は入管での新居間取りを惚けて声に出して説明する機転と、別れ際の一目ぼれ、そしてクラブでの三度笠。中国娘の三度笠だぜ。本邦河原者の芸能は外国人に受け継がれたのだ。泣かせるものがある。この記憶は最後に回想される。

冒頭のベトナムからのボートピープル、難民は基本的に受け入れる方針というテレビ報道は、皮肉としての記録なんだろう。日本が他民族国家へ変貌するのだとテレビは語っている。オーバーステイの偽装結婚、借金返しながら月10万の国への仕送り。みんなウィルス性肝炎に罹るが医者に行けずに肝硬変で死ぬコース。

アパート隣人のアラブ人はケッサクで、戻ったら勝手に炊事場使っていて「水道が止められたから借りた」などと事後承諾を求める。通路にゴミを積み上げてカラスが来て、お祈りを始め、へんなダンスを始める。洞口依子の偽指輪売りが素晴らしく、アニキはシノギだと知っているよと眉毛のない山本太郎は云うのだが知らなかったというギャグがいい。そしてこの指輪は最後までいい小物使いがなされる。「お金持ちは偉い人、貧乏人は罪人」。故郷のサロマ湖、兄の平田満の子供はロシア人との混血というラストがとてもいい。

(評価:★5)

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