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[コメント] 白昼の死角(1979/日)

演出から劇伴まで安い躁鬱病系で、基本シリアスなのに剽軽になったりメロウになったりするのが観客を小馬鹿にしているようでゲンナリさせられる。こういうのは優作映画ではキャラに上手くハマったものだが夏木勲には全く不似合い。二時間半の退屈地獄。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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「法は正義ではない 法は力である 私はそれを証明してみせる」との字幕に続いて空襲、東京裁判、孤児たち、絞首刑のタイトル。これでアプレ誕生という通念が示される。昭和24年、貸金融業太陽クラブの社長岸田森は闇金容疑かけられ踊りながらの焼身自殺(原作ではこの光クラブ事件が描かれるらしい)。東大同級で彼を手伝っていた夏木勲中尾彬竜崎勝の三人は東大も辞めさせられて、これからは闇金じゃない、企業相手に掠め取るんだ、本物の犯罪をやるんだ、と何でそうなるのか判らないまま物語は始まる。

クラブの残金で芸者遊びや事務所びらきなどしているが、闇金取り立ての精算はしなくて構わないのだろうか。素性のまるで判らない内田朝雄に云いがかりつけてタジタジになっていた処に拳銃ぶっ放して飛び込んできた千葉真一に救われるが、千葉が何者なのかもまたまるで判らない。この導入ですでに内容の薄さにうんざりする。こんなのが二時間半続くのだ。

夏木いのちと刺青している馬鹿な芸者の島田陽子と同衾して地獄の底までついて行くわと叫ばれ、岸田の愛人だった丘みつ子によろめかれてまたセックス、求婚されてから疑惑をはじめて口にしてエエッみたいな鈍い女。オンナふたりの対決があって丘の鉄道自殺がまたとても軽い。島田は結核にかかり夏木はいい薬があるんだ(結核が死因の2位に下がるのは昭和26年)と云っているが、夏木の逮捕知ってガスで無理心中図り自分だけ死亡。この際の安い雷の青がまた貧しい。

中米エルバドル共和国大使館の公司秘書兼通訳と組んで騙される成田三樹夫は読めないスペイン語の書面貰ってへこへこして帰り、辞書引いてみたら悪口が書いてあるという件は、商慣習の定まらぬ本邦の間抜けという処で本作唯一の面白味があった。この公司が儲けをカジノですって舞い戻り足がつく。ここまで夏木も警察も色んな法律口にしてこれは適法なんだと説明し続けるのだが、それが本当なのか作者の妄想なのかもよく判らない。最後はそんな判例はないと嘯いて刑事の天知茂が判例は俺がつくると返される。最後は岸田を真似た狂言自殺で逃走。

零細企業の専務佐藤慶を偽札と酒で騙す件など、佐藤が気の毒としか思われない。も少し巨悪を狙えんものか。いつもの嵐寛がいつものヤクザの親分なのも、角川春樹が呂律の回らぬ科白喋るのも、音楽担当のダウンタウンがクラブで演奏しているのも間が抜けている。夏木は終盤、亡霊に脅かされるが、その程度の神経の奴ではないだろうに。

(評価:★1)

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