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[コメント] 僕の村は戦場だった(1962/露)

断片は強力だが、話法は難解というより編集が下手なだけという気がする。
寒山

**ネタバレ注意**
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一番印象に残るのは母子で井戸を覗く件だろうか(暗いので昼でも星が見える、という)。とてもフェリーニっぽい夢想で、しかも『8 1/2』(63年)の前年の制作だ。廃墟と化した村で崩れ残った扉を律儀に行き来する老人も印象深い(『ノスタルジア』のドメニコも部屋のなかで同じ所作をする)。これらの断片は強力だが、しかし話法は難解というより、編集が下手なだけという気がする。

例えばガリツェフに保護されたイワンは最後に、老兵カタソーニチを心配している科白を吐くが、次のシーンでイワンがホーリン大尉に面会して学校へ戻す処置を猛烈に抵抗する件では、同じ部屋に何故かカタソーニチがいる(でしょ?)。彼はいつの間にか死んでしまうのだが、あそこにいる必要は全然ない。後年であれば時間の交錯で意味づけする処だろう。

マーシャが大尉に口説かれる白樺の林は人物の出し入れが面白く(これもベルイマンやフェリーニが想起させられる)とても美しいシーンだが、脇役の件を90分の映画に割り込ませるには長すぎ、全体から浮いている。そんな尺があるなら、死体を晒しものにされる二人の兵士の件を描いたほうがいいに決まっているのに、ただキャメラがパンしたら死体が並んでいるカットがあるだけで、音楽で無理矢理盛り上げている。戦争の告発というテーマを掘り下げる熱意は伝わらず、面白い映像をつなぎ合わせただけに見える。

これら欠点をしかしタルコフスキーは、解消でなく拡大することで自分のオリジナリティとしたように思われる。次回作の『アンドレイ・ルブリョフ』においては、主人公を絞らずに、人物をさらに散漫に交錯させ、箆棒な長尺作品にすることで人物の優劣づけを無効にして成功している。本作はそこに至る試行錯誤の過程に過ぎない。

(評価:★3)

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