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[コメント] 卍(1964/日)

観音様を奉るには決定的にエロ不足でボディダブルも不自由。同時代ではたぶん立派だったのだろうが、今となってはポルノ映画到来前の半端な作品でしかない。騙し騙されの恋愛ゲームは素っ頓狂なだけでコクがなく興を覚えない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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絵画学校で観音像描く岸田今日子の顔は若尾文子似。若尾は体は似てへんと裸見せて、「〇〇してほしい」みたいなエロキューション愉しく、「こんな綺麗な体して、憎たらしい。殺してやりたい」「殺して」で全裸で抱き合って、ピアニッシモの不協和音連打。日中ふたりきりで裸婦画を描き続ける様を疑う岸田の亭主船越英二は「変態性欲や」「あんた古臭いねん」。その後も薄着で部屋にふたりという件もあるが、レズビアン描写はそれくらい。時代の制約はあるだろうがそれでも、こればかり描写し続けたら面白かっただろうに。後期の増村=若尾映画のボディダブルはいつもながら不自由で、ポルノ映画招来の必然性が理解される。

話は若尾の婚約者川津祐介に船越までも交えて、四者の狸と狐の化かし合いが転々と展開、長編を90分に押し込んで落ち着きなく、若尾の嘘泣きも川津の詐欺師っぷりもタメがないため演技合戦にしか見えない。最後は観音像が完成して、岸田、若尾と船越が白装束着て三人並んで自殺するが岸田だけ死ねなかった、ふたりだけで心中したのかと岸田が嫉妬する収束。ゲームのようなホンは上手いのかも知れないが面白くはなく、そんなもんですかという感想しか残らなかった。昔なら王朝ものでしか描かれなかった恋愛ゲームが一般家庭にも到来して天下泰平という気はする。岸田の告白相手の谷崎三津田健のむっつり助平振りは、二人称告白体の小説の料理法として面白かった。再見。

(評価:★3)

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