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[コメント] ハムレット・ゴーズ・ビジネス(1987/フィンランド)

二重顎のピルッカ・ペッカ・ペテリウスは三島雅夫を彷彿とさせ、真面目に演れば演るほどハムレットは間抜けになる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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というカウリスマキの方法は本作辺りで完成したのだろう。これは映画史上新しかったはず(日本でウケたのは漫才ブームの延長として捉えられたからじゃないだろうか)。本作はこの方法を古典劇で試して際立たせている。どう観ても悲劇なのに喜劇と銘打って周囲の度胆を抜いたのはチェーホフであるが、本作がチェーホフだったら割と当たり前であり、シェークスピアまで遡ったことに意義があったと思われる。

だたこの「ゴーズ・ビジネス」、資本階級批判の裏主題が真面目なだけに、何か焦点を外している感想が残ってしまう。「一度でいいから良いことしてみたい」と会社売却をうっちゃるハムレットは、しかし最後にやっぱり会社を売却しようとし、親殺しの唐突な告白が重なる。彼を悪役にしてしまうのは無茶であり、ブルジョア階級総破綻を印象づけられはするが、最後にハムレットを殺して逃走する運転手と恋人も別に労働者階級の英雄では全然ない訳で、呆気に取られているうちに映画は終わる。『カラマリ・ユニオン』同様の二名を除く総崩れという形式だけが残った。

ベストショットは狙われた相手の頭部にステレオを突き刺す件。ハム好きのハムレットが鶏で救われるという展開は味わい深い。「小国日本に木材産業を乗っ取られる」という科白が87年を記録している。

(評価:★3)

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